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通りすがりの性的倒錯
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 次の日が休みなのをいいことに、僕は夜更かしをしていた。柄にもなくテレビをつけっ放しにして、これまた柄にもなく音楽番組なんぞを見ていた。
 延々流れてくるジェイ・ポップがひたすらチープなので、僕はいい加減にうんざりしてテレビを切った。性に合わないことはするものではない。時計を見るとすでに丑三つの刻を過ぎていた。草木も街も眠っている。そろそろ自分も寝るか、と僕は居間から出るドアを開けた。
 すると。

 茶褐色の影が動いた。

 僕は短く驚嘆の声を上げた。そして、恐怖した。

 Gである。

 僕がその場に硬直していると、Gは僕の前を横切り、ドア脇の台所へ逃げこんだ。僕がなんとか足を動かし、恐る恐る覗きこむと、Gは流し台の足元にある紙袋の隙間で長い触角をゆらゆらさせていた。
 僕は居間(の真ん中)へ飛んでゆき、縋るようにしてソファへ這い上がった。そして置いてあった携帯電話を手に取り、ツイッターを開いて、「ゴキブリ どうしよう」とだけつぶやいた。するとなんだか気分が落ち着き、頭も冷静になってきた。
 よし、寝よう。見なかったことにして、寝よう。
 僕はGに出くわしたという恐るべき事実を記憶から葬り去る方向に決めた。何しろ応援も来ず派手な動きの出来ない夜中にひとりでGと対峙するのは分が悪すぎる。そうと決めたらトイレに行きたくなった。気が緩んだのである。僕は居間を出て、トイレのドアを開いた。

 Gである。

 僕はそっとドアを閉めた。
 何故Gがここにいるのだ。先ほどの奴がここへ来たのか、それとも仲間がいるのか。後者は極力考えたくない。僕は再びソファへ逃げ込み、ツイッターを開いて「再ゴキ」とつぶやいた。反射的なリラックス方法である。
 さて、僕は非常に困った。やはり見なかったことにして寝てしまえばいいのだが、如何せんこの尿意である。このままでは寝られない。かと言って、トイレはすでにGの支配下にある。僕はGとの戦いを余儀なくされた。
 そういえば、以前にツイッターでゴキブリを安全に殺す方法というのを見かけたことがある。熱湯をかければ体表の油が融けて死ぬというものだ。ペットやら赤ん坊のいる家庭にもオススメな方法である。
 僕は無駄な殺生はしない主義だったので非常に悩んだ。しかし、逃がしてやろうにもリスクが高すぎる。逃がす途中でうっかり僕のほうへ飛んでこようものなら恐ろしすぎて死んでしまう。
僕はけっきょく倫理観のほうを捨てた。僕はマグカップに水をくみ、電子レンジに突っ込んだ。

 僕が恐る恐るドアを開くと、Gはまだトイレにいた。その長さを持て余すようにして触覚を揺らしている。僕は申し訳ない気持ちになりながら、火傷する程度に熱い取っ手を握りしめた。
 僕は熱湯をGめがけてぶっかけた。見事に命中した。
 Gは飛び上がって黙ったまま絶叫し、僕も心の中で絶叫しながらドアを素早く締めた。もし慌てたGがドアの隙間から出てきでもしたら非常に怖い。僕はドアから少し離れた。しかしGは出てこない。僕は再び、ゆっくりとドアを開く。Gはまだ生きていた。毛深い足を高速で動かしてもんどりうっている。非常にグロテスクだった。僕は必死に謝りながら残り半分の熱湯をGに浴びせた。Gはまた飛び上がり、触覚を振り乱しながら暴れたが、しばらくすると動かなくなった。僕はドアの隙間からGを眺める。やはり動かない。Gは完全に息が途絶えたようである。僕は目をつむり、宗派もないのに手を合わせた。

 さて、僕は再び非常に困った。問題はこの後にあったのだ。トイレはすっかり水びたしになり、真ん中にはGの屍骸が転がっている。この状況の始末である。
 僕は生きている虫はまだ平気だが、死んだやつはどうにもダメだった。以前、大きな紫色の蝶が死んでいくさまをじっくり眺めたときからすっかりダメになっていた。僕はトイレの前をうろうろした。さながらKの死体を前にぐるぐるする先生のようだった。
 いい加減に尿意が限界だったので行動を起こすことにした。リサイクル用の雑紙の山から固めのチラシを引っぱりだし、折り目をつけてスコップ代わりにした。そしてビニール袋を用意した。本当はゴミ拾い用のトングがあればよかったのだが、夜中に倉庫を漁るなどすれば、うっかりすると通報されかねない。
 ビニール袋に手を突っ込んでGの屍骸を拾い、そのまま裏返して口を閉じればそれでおしまいなのだが、直接でないとはいえ虫の屍骸を手掴みするなどそんな芸当は僕には出来ない。もしうっかり蘇生して暴れ出したり、握りつぶして中身がはみ出たらどうするんだ。恐ろしい。僕はチラシ製スコップでGを掬い上げビニール袋に入れる戦法をとった。しかしこれが意外と難しい。周囲が水びたしなのである。そこそこ丈夫な紙を使ったとはいえ、すぐにふやけてしまう。仕方がないのでチラシをもう一枚用意し、ビニール袋を出来る限り寄せてGをぽいっと袋の中へ押しこんだ。
僕は薄目で袋の中を覗いた。足に細かい毛がびっしり生えているのがよく観察できた。動かなくなったGはなんだか小さく見えた。僕は黙ってビニール袋の口を固く結び、燃えるごみの袋へ捨て、もう一度目をつむって手を合わせた。そして水びたしのトイレをどうにかし、ようやく自分の用が足せたのである。
 Gの怖さは精神的なところにある。その造形や生態が人間の恐怖感をあおり、しなくていい妄想を膨らませるのだ。Gの仲間たちが今後僕に群がったりしないことを祈りながら、僕は浅い眠りについた。




というのがこないだの土曜の夜の話です。

怖かった…………怖かった。

ゴキブリってなんであんなに怖いのだろうか。

こう、ゴキブリを見たとき瞬間的に「家じゅうにこんなのがいるのか」「自分のほうへ飛んできたらどうしよう」「群れになって俺の足を這いあがってきたらどうしよう」って妄想がハイスピードで膨れあがるんだよね。これが文中にある「しなくていい妄想」のことです。あとは、殺したゴキブリの仲間が報復しようと俺の部屋で大量に待ち受けてるとか。
虫を殺さずに共存する方法はないのかね……


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プロフィール
HN:
カルトッフェル村崎
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非公開
職業:
制服界の貴公子(予定)
自己紹介:
●特殊な人種に分類される系の凡人です。
●GIDとTGを行ったり来たりしているセクマイです。
●性癖と思考が偏っています。


●すきなもの

・Sound Horizon / ZABADAK / Serani Poji
・ヤンデレ彼女 / HELL HELL / ボールルームへようこそ / 四月は君の嘘
・アイマス / モバマス
・イケメン女子
・制服


●経歴とか

・現在ニート
・チビハゲブサイクの三重苦
・ぼっち

・マニアック戦隊まにれんじゃー 紫パープル
・創作戦隊ブンガクジャー
  ブンガクダークブルー(引退)
・奇想戦隊ストレンジャー
  ストレンジムラサキ


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