知り合いの腐女子さんと話してた結果。
ホモです。

「こらぁっ！」
突然の怒鳴り声に驚いて振り返ると、数学の鈴木先生が男子生徒二人を叱っているところだった。叱られている男子二人は不真面目な奴らで、廊下を走ったりガラスを割ったりしてよく鈴木先生に呼び出されていた。僕は教室に入ろうと思っていたのだけど、鈴木先生達は僕が今いるところと教室の間にいるので入るには入れない。仕方ないので、遠巻きに彼らを見ていることにした。
「お前らは何度言ったら俺の日本語が理解出来るんだ！ 真面目に聞いてるのか！」
不真面目な彼らが先生の話を真面目に聞くわけがない。僕はだらしなく制服を着こなす彼らから先生の方へ視線を移した。先生は黒いスーツに黒いネクタイをきっちりと締め、いかにも堅苦しい印象だった。だけど鈴木先生にはそれが良く似合っていて、見慣れたせいもあるだろうけどそれが一番先生らしいと思うのだ。
　と、鈴木先生と目が合った。僕は慌てて頭を下げた。
「お、おはようございます」
「おう」
鈴木先生は僕に答えると、また二人の方に向き直った。
「朝っぱらから怒鳴りたくねえからこのくらいにするけどよ、あんまり懲りねえと頭剃るからな」
乱暴な口振りだ。野球部の顧問でもやればよかったのに、と僕はふと思い、思わず吹き出しそうになった。鈴木先生が野球のユニフォームを着ていたら、さぞかし似合わないのだろうな。
「佐藤ォ！」
「はいっ！」
先生が怒鳴った。ずかずかとこちらへ近づいてくる。
「何笑ってんだ、俺の顔に何かついてるか」
「そんな、めっそうもございません！」
こつん。名簿の背中で頭を軽く叩かれた。
「お前はいちーち敬語が大袈裟なんだよ。可笑しいからやめろ」
「はぁ……」
先生はにやにやと笑いながら、数学準備室の方へと帰っていった。白髪交じりになり始めた先生の後ろ姿を見送る。僕も教室へ行かねば、と後ろを向くと、さっきの二人組が立っていた。
「助かったわー。お前のおかげで説教回避だよマジで。さんきゅー」
「マジ鈴木ありえねえわ……お前は人生で一度も廊下走ったことねえのかよ、ったく」
「先生は呼び捨てにしない方が……」
そんなに親しくもないのに軽い調子で話しかけてくる。僕は教室に入りたいのだ。
「にしても、お前ほんとに鈴木に気に入られてるよな」
「は、僕？」
そう言われても、鈴木先生とは特に接点がない。数学の授業は別の先生が担任なのだ。
「お前はいい子ちゃんだからあのカタブツは好きだろうなー」
一人がそう言って僕の頭を小突く。僕は特にいい子ちゃんなわけではない。まぁこの二人に比べたら真面目だろうけど。挨拶と敬語はしっかりしている自信がある。そのせいでさっきは先生に笑われたわけだが。
「まあ鈴木に好かれても嬉しかねーだろうけど。怒られねえのは羨ましいよな」
「それは君達が悪いんじゃ……」
「何だとてめえ！」
首をホールドされたとき、チャイムが鳴った。
「うお、やべぇ！」
「僕まで巻き込むなよ！」
ばたばたと慌てて教室へ駆け込む。珍しく先生に怒られてしまった。
　席について、そうか、好かれてるのかあと独りごちてみる。特にいい気分なわけでもないが、悪い気はしなかった。個人的には良い先生だと思うし、授業も上手いらしいから、来年担任になってくれたらいいなあとは思う。
　そこまで考えてはっとした。僕は何を考えているのだろう。先生に好かれているかどうかも分からないのに。というか、たかが教師にお気に入りにされたくらいで、何をこんなに悶々と悩んでいるのだろう。考えても浮かんでくるのは、不敵な笑みを浮かべた鈴木先生の顔だった。










※色白眼鏡って書いてない
※ツンデレ要素がない
※別に数学じゃなくてもよかった
※今時僕っ子って人口の５％くらいなんじゃね？



うちの学校のツンデレ数学教師への萌えが爆発してたところを例の腐女子さんに見つかって「美味しいじゃん」って言われて折角だから書いてやった。

この物語はフィクションです。
実際の人物・団体とは一切関係ありません。