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むかし手で書いた百合小説が出てきたので打ち込んでみました。
分かりやすく言うとむらってます。あんまり明るい話じゃないです。
分かりやすく言うとむらってます。あんまり明るい話じゃないです。
目の前に、血まみれの私が転がっていた。
「は?」
私は自分の目を疑った。何度まばたきをしても、血を吐いて横たわっているこれはどう見ても私だった。わき腹からどくどくと血が流れ、赤い水たまりを作っていた。
「何これ」
私が私に手を伸ばそうとすると、視界に影が飛びこんできた。
「さあちゃん! どうして死んじゃったの!」
親友のあみちゃんだった。あみちゃんは動かないほうの私を抱きかかえ、わんわん声をあげて泣いた。
「あみちゃん、あみちゃん!? 私、ここにいるよ!?」
私があみちゃんの腕を引っ掴もうとすると、私の手は見事にあみちゃんの体をすり抜けた。私はぎょっとしてあみちゃんのほうを見た。あみちゃんの涙はぱたぱたと地面に落ちて、その地面には血まみれの私とあみちゃんの影ができていた。私は自分の足元を見た。私には、影がなかった。
「……私、死んだの?」
私がそうつぶやくと、あみちゃんの鳴き声がぴたりとやんだ。その代わりに、くつくつという微かな笑い声が聞こえた。
「……あみちゃん?」
「これで、さあちゃん、私のものだね」
あみちゃんは私を猫のように抱き上げたままふらふらと立ち上がり、まるで踊るみたいにくるくる回りはじめた。
「あみちゃん!?」
「さあちゃん、さあちゃん! 私うれしい! これでもうさあちゃんを誰にもとられないんだもの!!」
あみちゃんはうっとりした顔をして、足元の血だまりを跳ねかしていた。と、からんという音がした。何かがあみちゃんの足に蹴飛ばされてきらきら光っていた。私はしゃがみこんでそれに手を伸ばした。しかし手のひらに感触はなく、そういえば私は霊体なのだということを思い出して、血だまりの赤を見つめた。鋭利な輪郭が見えた。血を吸ってなお銀色の輝きを持つそれは、ナイフだった。
止まったはずの心臓が、ばくばく音を立てているような気がした。私は、死んだんじゃない。この子に、あみちゃんに、殺されたんだ!
「あみちゃん、あみちゃん! なんでこんなことしたの!? ねえ!」
私の叫びはあみちゃんには届いていない。だって私は死んでいて、この私がいくらのどを嗄らしたところで声なんて出ていないに等しいのだから。
「あみちゃん」
「違う」
ささやくように言って、あみちゃんは踊るのをやめた。
「あみちゃん……?」
「違う、さあちゃんじゃない、こんな静かで大人しくてしゃべらなくて動かないの、私の好きなさあちゃんじゃない!」
「あみちゃん!」
べちゃ、ともべしゃ、ともつかない気持ち悪い音を立てて、死体の私はあみちゃんに投げ捨てられた。冷たい顔をしたあみちゃんは全身血みどろで、まるで死体か殺人鬼のようだった。
「さあちゃああああああん」
「あみちゃ……」
あみちゃんはひったくるようにナイフを拾いあげると、自分ののどに突き刺した。
「あああああああ」
「あみちゃん!?」
あみちゃんの絶叫とともに血がふき出し、世界が真っ赤に染まった。あみちゃんの血は私の眼球をすり抜けて、私の視界はすぐに晴れた。哭きやんだあみちゃんはどすんと鈍い音を立てて、私の死体の上に倒れこんだ。
「あみちゃん、あみちゃん!」
私はしゃがんであみちゃんを見た。あみちゃんは動かない。
「さあちゃん」
上から声が聞こえた。顔をあげると、私の知っている、優しく笑ったあみちゃんがいた。
「さあちゃん、私、死んじゃったぁ」
「知ってるよ! 今、私の目の前で死んだんだもの!」
いきり立つ私の前で、あみちゃんはなおも笑っていた。あみちゃんが私の頬に触れた。
「さあちゃん、これで私たち、ずっと一緒にいられるね、ずっとずっとだよ。私、今、きっと世界じゅうでいちばんしあわせだと思う」
そう言うあみちゃんの手には、温度も感触もなかった。
「私は全然しあわせじゃない……」
「そう。でも私はしあわせだよ」
あみちゃんは微笑んだ。すると、あみちゃんの輪郭がぼやけて、だんだん形を失いはじめた。
「は? 何これ、ちょっと、あみちゃん」
「成仏するの」
「は」
「私、この世に未練が、とどまる理由が無くなっちゃったから、成仏して消えちゃうの」
あみちゃんの肌が、髪が、瞳が、色素がこわれていくみたいに、淡い色合いになって、空気に溶けていく。
「待ってよ、ねえ、私はどうなるの、私を置いていく気なの、あみちゃん!」
「なあんだ、やっぱりさあちゃんも私がいないとダメなんだね」
あみちゃんはコロコロ笑った。
「でも、ごめんね、ばいば――」
声が途切れた。あみちゃんは消えてしまった。
「あみちゃん?」
私は目の前の空気を見つめた。あみちゃんはいない。
「何これ……いやだ、いや、いやあああっ!!」
私は叫びながらナイフを手に取った。しかし私の手はナイフをすり抜けてしまった。
私は死んでしまった。死ぬこともできない。
「いやだあああああああ!」
温度のない涙がぼろぼろとこぼれていく。私がどれだけ叫んでも、足元の血だまりは時間が止まったみたいに静かだった。
死体のにおいをかぎつけて、黒い蠅が一匹、私の眼球をすり抜けていった。
〈了〉
ぶっちゃけ最初の一行目が書きたかっただけなんだと思います。
夜中の2時頃に書いたのは覚えているんですが、日付が分かりません。むー。
あみちゃんとさあちゃん、平仮名だと読みづらいです。
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プロフィール
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HN:
カルトッフェル村崎
性別:
非公開
職業:
制服界の貴公子(予定)
自己紹介:
●特殊な人種に分類される系の凡人です。
●GIDとTGを行ったり来たりしているセクマイです。
●性癖と思考が偏っています。
●すきなもの
・Sound Horizon / ZABADAK / Serani Poji
・ヤンデレ彼女 / HELL HELL / ボールルームへようこそ / 四月は君の嘘
・アイマス / モバマス
・イケメン女子
・制服
●経歴とか
・現在ニート
・チビハゲブサイクの三重苦
・ぼっち
・マニアック戦隊まにれんじゃー 紫パープル
・創作戦隊ブンガクジャー
ブンガクダークブルー(引退)
・奇想戦隊ストレンジャー
ストレンジムラサキ
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