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ホモです。
学校へ行こう。
僕は跳ねるようにしてベッドから身を起こした。長らく目覚ましとしての機能を忘れられていた時計の針は九時を指している。授業はとっくに始まっているのだけど、僕はまだ家にて惰眠を貪っていた。不登校六か月目の朝である。
高校一年生の冬になって、学校に行けなくなった。いじめられた経験もなく、人並みに友達だっていて、まぁ成績だってどちらかと言えばいいほうだった。何故不登校になったかと問われれば、なんとなくである。学校に行く気が起きない。学校まで足を運んで、黙って五十分間大人しく座って、世間話をしながら弁当を食べて、また授業を受けるのが、なんとなく億劫だった。いわゆる新型うつだ、と父が言っていた。僕には病名なんてどうでもよくて、それは、父や母が不登校の子供を持っているという汚名への言い訳でしかなかった。
でも、今日は、誰かが、僕を呼んでいるような気がして。
昇降口にて、僕はふと動きを止めた。僕は、二年生になった自分の出席番号を知らない。クラスは、昨年の同級生からまた同じクラスだねというメールを貰っていたから知っていたけれど、僕は二年生になってから始業式すら出ていないのだ。自分の下駄箱が分からない。僕は渡辺という名字なので、どうせ出席番号は最後のほうなのだろうけど、そもそも自分のクラスの下駄箱がどこにあるかが分からない。というか、昨年の同級生たちは、僕の上履きを移し替えてくれているのだろうか。手当たり次第に下駄箱の扉をがたがた開け閉めしていると、「おい」という半分怒鳴ったような声が聞こえた。
「何してる」
白衣を着た、若い男の人だった。初めて見る顔だ。新しい先生だろうか。
「すいません、自分の下駄箱が分からなくて」
僕が言うと、彼は僕の顔をじっと見つめてきた。彼は不格好な黒縁の眼鏡をかけていたが、顔立ちはそれなりにきれいだった。
「渡辺くんか?」
初対面のはずの彼が言った。僕が驚いて突っ立っていると、彼は下駄箱の周りをうろうろとし、一か所から上履きを取り出した。久々に見る、僕の上履きだった。
「きみ、A組の四十三番だよ。下駄箱はここね」
「あ、ありがとうございます」
僕は少しびくつきながら上履きを受け取った。なんでこの人は僕のことを知っているのだろうか。僕が上履きを履くのを、彼はずっと見ていた。
「あの、じゃ、これで僕は……」
「待て。ちょっと来なさい」
「あっあの、僕、遅刻じゃないです。いや遅刻ですけど、そうじゃなくて」
「知ってるさ。……学校、来られないんだろ」
「え?」
「とにかくついておいで」
彼がくるっと背を向けると、白衣の裾がふわりと翻った。僕は黙って彼についていった。無機質なコンクリートの壁は僕を歓迎しているとも拒んでいると思えなかった。
「名乗ってなかったね。僕は伊藤。君の物理の担任だ」
ごん、と鈍い音を立てて、湯気ののぼるマグカップが目の前に置かれた。黒々としたコーヒーがなみなみ注がれていた。
僕は理科準備室と呼ばれる、彼の――伊藤先生の部屋に招かれていた。事務机には乱雑に書類が積まれていて、もはや机としての機能を失っている。僕の座っているワインレッドのソファはぼろぼろで、糸がほつれたり日焼けしたりしていた。
「それで僕のこと知ってたんですか」
「まぁね」
彼は机のほうに向かうと、錆びついているのか開閉のしづらそうな抽斗をぎしぎし言わせながら開けて、プリントの束を取り出した。
「板書まとめといたから。手書きだから字が汚いかもしれないけど、読めなかったら言ってよ」
「え、あ、ありがとうございます……?」
束の紙には、図だの計算式だのがきっちり書き込まれていた。先生の字は汚くなんかなくて、それはもう丁寧だった。先生はそっぽを向いてコーヒーをすすっていた。先生の眼鏡は曇っていた。
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プロフィール
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●性癖と思考が偏っています。
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●経歴とか
・現在ニート
・チビハゲブサイクの三重苦
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